• リスト

【壊憲・改憲ウォッチ(53)】戦争体験者や家族を侮辱し、傷つける自民党西田議員・参政党神谷代表の「歴史修正主義」

2025年7月13日

【1】自民党西田参議院議員・参政党神谷宗幣代表の発言

2025年5月3日、沖縄県神社庁と神道政治連盟県本部、日本会議県本部などが主催、自民党県連が共催した、憲法改正に関するシンポジウムが沖縄で開催されました。

そこで自民党西田昌司参議院議員は「ひめゆり平和祈念資料館」の説明について、「ひどい」、「歴史を書き換えられると、こういうことになっちゃう」などと発言しました。

5月10日、参政党の神谷宗幣代表は「本質的に間違っていない」と自民党西田議員をかばいました。

【2】当事者を侮辱し、傷つけた自民党西田議員、参政党神谷代表

ここでドイツ近代史、ホロコースト研究を進めている武井彩佳学習院大学教授の見解を紹介します。

歴史的事実の全面的な否定を試みたり、意図的に矮小化したり、一側面のみを誇張したり、何からの意図で歴史を書き換えようとすることが「歴史修正主義」(revisionism)とされます(武井彩佳『歴史修正主義』(中公新書、2025年)iページ)。

そして武井教授は以下の指摘をします(前掲書182ページ)。

「ホロコースト否定論や歴史修正主義は、その出来事を経験した当人を確実に傷つける。自分が味わった苦痛や絶望をでっち上げと言われ、なかったものとされて怒りを感じない人はいない。また、その人が負った苦しみを間近で見て、ともに苦しんできた家族も、否定論によって傷つけられる。死者は、死そのものを否定される。彼らは二度殺されたともいえる。つまり歴史の否定はまず歴史の当事者に対する攻撃である」。

武井教授が指摘していることは、今回の自民党西田議員や参政党神谷代表の発言にも当てはまります。

自民党西田発言について、ひめゆり平和祈念館側は「後世に絶対戦争を起こさせないために伝えようとした方々の気持ちを否定し、冒とくするものだ」と批判しました。

ここで「ひめゆり学徒隊」について紹介します。

映画などで有名になった「ひめゆり」は、沖縄師範学校女子部と沖縄県立第一高等学校という2つの学校の愛称です。

那覇市安里の校舎で13歳から19歳の女子約1150人が学んでいました。

1945年3月23日、アメリカ軍の沖縄上陸作戦がはじまりましたが、その際にひめゆりの生徒や教師240人も動員されました。

そして240人のうち136人が亡くなりました。

元ひめゆり学徒たちは「生き残って申し訳ない」という気持ちから、戦争体験を語ることをしてきませんでした。

しかし1989年、「私達の戦争体験を語り継ぎ、戦争の実相を訴えることで、再び戦争をあらしめないよう、全力を尽くしたい」との思いから、元ひめゆり学徒たちは「ひめゆり平和祈念資料館」を開設しました。

ひめゆり平和祈念資料館にはひめゆり学徒たちの証言などが紹介されています。

そうした証言などを自民党西田昌司参議院議員は「歴史の書き換え」「ひどい」と発言し、参政党の神谷代表も西田発言を「本質的に間違っていない」と発言しました。

苦しい戦争体験をされたひめゆり学徒たちの発言を「歴史の書き換え」などと言った自民党西田議員、それに同調した参政党神谷代表、彼女たちが嘘をついていると言っているに等しいことになります。

自民党西田氏や参政党神谷代表こそ、「人」として「ひどい」のではないでしょうか?

参政党神谷代表は「日本軍は沖縄を助けに来た」とか「日本軍が沖縄の人を殺したわけじゃない」とも発言しています。

まさに歴史的事実を無視する、参政党神谷代表の「歴史修正主義」が全面に出ています。

ひめゆり平和祈念資料館には「壕を追い出された父子」の事例、「スパイ」として殺された娘さんが叫んだ事例なども紹介されています。

ひめゆり平和祈念資料館だけでなく、「日本軍による住民殺害」に関する証言は多く残され、たとえば日本兵により刀で祖父を虐殺された仲村元一さんは参政党の神谷宗幣代表を「戦争のことを何も分かっていない」と批判します(『沖縄タイムス』2025年5月12日付)。

参政党神谷代表は戦争体験者や家族を平然と侮辱し、傷つけています。

【3】自民党西田議員・参政党神谷代表個人の話でない「歴史修正主義」

歴史修正主義は自民党西田議員・参政党神谷代表だけの問題ではありません。

6月6日、京都市議会は西田議員に対する決議案を賛成多数で可決しましたが、この決議に自民党と公明党は反対しました。

自民党や公明党は西田議員の発言を問題ないとしています。

自民党や公明党が「歴史修正主義」に加担するのは今回だけではありません。

第一次安倍自公政権の下の2007年、高校歴史教科書検定で沖縄戦での「集団自決」(強制集団死)に関し、日本軍が強制したとの記述が削除・修正される事態が生じました。

それに対して2007年9月29日、「教科書検定意見撤回を求める県民大会」が沖縄で実施、約11万6千人が集まりました。

この県民大会で高校生が「この事実を無くそうとしている人たちは、私たちのおじい、おばあたちが 嘘をついていると言いたいのでしょうか」と発言しました。

高校生にこのような発言をさせた自民党・公明党をどう考えますか?

たとえば強制集団死(集団自決)の際、金城重明さんは自分の母親と妹・弟を棒で殴り殺す状況に追い込まれました(『沖縄タイムス』2007年6月8日付)。

自民党や公明党は、金城さんが「軍の強制」でなく「自分の意思」で母親や妹・弟を棒で殴り殺したと言うのでしょうか?

自民党や公明党、ひどすぎるのではないでしょうか?

最近では参政党神谷代表が典型的な「歴史修正主義者」ですが、戦争体験者やその家族を平然と傷つける政党が言う「日本人ファースト」、参政党が創る「新日本憲法」などを見ると、実態は「大日本帝国ファースト」と言えるのではないでしょうか?

「歴史修正主義」は単なる過去の歴史認識の話ではありません。

戦争体験者やその家族を再び傷つけ、侮辱することから、まさに「今」の問題です。

参考までに紹介しますが、ドイツでナチスやヒトラーをほめたり、「アウシュビッツはなかった」などと発言すれば「民衆扇動」(die Volksverhetzung)の罪で処罰されます(「民衆扇動罪」ドイツ刑法130条)。

たとえばドイツ刑法130条4項では、ナチスの「暴力的かつ恣意的支配」を是認・賛美、あるいは正当化することで、「犠牲者の尊厳を侵害する態様で公共の平穏を乱す」行為が犯罪になります。

ドイツでは、「歴史修正主義」は「公共の平穏を乱す」とともに、「人間の尊厳への攻撃」(Angriff gegen die Menschenwürde)として「犯罪」とされます。

戦争体験者やその家族を傷つける行為に加担しないためにも、私たちには主権者として適切な判断と対応が求められます。