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【壊憲・改憲ウォッチ(57)】日本政府に謝罪を求める元イギリス兵

2025年8月19日

飯島滋明(名古屋学院大学、憲法学・平和学)

【1】「いまを、戦前にさせない」(日本テレビ放映)

戦後80年となる2025年、日本テレビは「いまを、戦前にさせない」をテーマに特集を組み、放送しています。

https://news.ntv.co.jp/category/society/b3828d2805904043a67e70b72519c857

その中で日本テレビは「捕虜となった元イギリス兵語る旧日本軍の暴行の実態 戦後80年」を放映しました。

内容を紹介します。

2025年8月、第2次世界大戦での日本への勝利を記念する式典がイギリス各地で開かれました。

この式典でジル・ジョーンズさんは慰霊碑に花を手向けていました。

というのも、ジョーンズさんの亡き父アーサー・ティザリントンさんは、「太平洋戦争」(1941年~45年)の際にシンガポールで日本軍の捕虜になり、台湾の収容所に送られて3年間を過ごしました。

その間、ティザリントンさんは日本兵から昭和天皇にお辞儀をするように言われました。

しかし拒否しました。

そのため日本兵から暴力を振るわれ、前歯を折られました。

50年後の1995年、日本テレビはティザリントンさんに取材をしていますが、ティザリントンさんは入れ歯を放り投げ、書類を激しく叩きつけました。

ティザリントンさんの怒りのすさまじさが分かります。

「どんな実態だったのか日本人にちゃんと伝わってるだろうか? 分かってもらわなきゃいけないんだ」とティザリントンさんは感情の抑制のきかない声で述べました。

10年まえに亡くなったティザリントンさんのお墓には、彼が日本政府に求めていた「謝罪」という日本語が刻まれています。

【2】日本政府に謝罪を求める元イギリス兵

放送ではティザリントンさんの捕虜の時の写真が紹介されています。

あばら骨が浮き出ているなど、食事も不十分だったことも分かります。

あばら骨が浮き出ている捕虜の写真、たとえば私はタイのカンチャナブリやシンガポール、オーストラリアの首都キャンベラの戦争博物館でも見ています。

オーストラリアの首都キャンベラにある、国立の戦争博物館の写真を紹介します。

なにより映像からは、ティザリントンさんのすさまじい怒りは戦後50年たっても消えていないことが分かります。

中国や韓国との「戦後補償」の話になると、「中国人・韓国人はしつこい」「いつまで言っているのか」などとSNS等で発信されます。

ただ、日本軍の捕虜になった元イギリス兵ティザリントンさんの日本に対する激しい怒りが示すように、アジア・太平洋戦争で日本兵から家族を殺されたり、虐待や性被害を受けた人たちは、何年たっても苦しみや憎しみをなくすことはできません。

中国人や韓国人がしつこいなどいう中傷は適切ではありません。

さらに日本兵から虐待や暴力を受けた人たちに対し、「日本軍は悪いことをしていない」と言ったらどうなるでしょうか?

たとえば沖縄戦の歴史認識で参政党神谷代表は「日本軍は悪くない」といった発言をしていますが、かりにティザリントンさんの娘ジョーンズさんに直接、「日本軍は悪くない」と言ったらどうなるでしょうか。

オーストラリア国立の戦争博物館の写真にあるように、日本軍の捕虜になったオーストラリア人の3人に1人が亡くなっています。

そして映像からは、戦後80年たった今でも当事者や家族は、戦争の苦しみや憎しみを抱えている事が分かります。

こうした事実からも、戦争は絶対にしてはいけません。

日本を再び「戦争する国」にさせないため、私たちは主権者として戦争準備をする政治家たちを選挙で選ばないことが重要になります。