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【資料】日米防衛協力のための指針(ガイドライン)

2014年9月12日

「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」の年内の見直しに向けた作業がすすめられており、10月上旬に中間報告をまとめるとされています。

今回の改定に、「集団的自衛権」行使容認の閣議決定がされたことを受け、周辺事態での米艦船防護など米軍への後方支援拡大、また日本周辺とされてきた米軍との協力範囲の地理的制約撤廃を盛り込むことが目論まれているようです。まずこのガイドラインについて日米で合意、その内容を踏まえて戦争関連法案が策定される流れになると予想されます。

参考資料として、この「ガイドライン」について、旧ガイドライン(1978年策定)・現ガイドライン(1997年改定)の要点をまとめましたので掲載します。

旧ガイドライン(1978年)の概要

この指針は、日米安保条約及び関連取極に基づいて両国が有する権利・義務に何ら影響を与えない。米国に対する日本の便宜提供・支援は、日本の法令に従う。

Ⅰ.侵略を未然に防止する態勢

1.日本は、地位協定に従い、米軍による施設・区域の安定的かつ効果的な使用を確保。米国は、核抑止力を保持し、即応兵力を前方展開し、来援兵力を保持。

2.日本への武力攻撃に共同対処する作戦、情報、後方支援等で協力体制を整備。

①日本防衛のための共同作戦計画を研究し、共同演習・訓練を実施。作戦上の共通の実施要領を研究・準備(作戦・情報・後方支援を含む)。

②日本防衛に必要な情報を作成・交換。緊密な情報協力態勢を充実。

③相互支援を実施し得るよう、補給・輸送・整備・施設等の機能について、あらかじめ相互に調整。

Ⅱ.日本への武力攻撃に際しての対処行動等

1.武力攻撃のおそれがある場合

自衛隊と米文の調整機関の開設等を準備。作戦準備に関し共通の基準をあらかじめ作成。

2.武力攻撃が行われた場合

①日本は原則として、限定的・小規模な侵略を独力で排除。それが困難な場合は米国の協力で排除。

②緊密な調整で共同作戦

(1)作戦構想

(a)陸上作戦 日米共同作戦。陸自は阻止・持久・反撃。米軍は来援、反撃作戦を共同実施。
(b)海上作戦 周辺海域の防衛、海上交通の確保の共同作戦。米軍は海自を支援、機動打撃力の使用を含め撃退作戦。
(c)航空作戦 空自は防空、着上陸阻止、体地支援、偵察、輸送。米軍は空自を支援。航空打撃力を含め撃退作戦。

(2)指揮・調整 緊密な協力の下、それぞれの指揮系統に従って行動。双方は共同作戦のため、あらかじめ調整された手続きで行動。

(3)調整機関 調整機関を通じ、共同作戦。

(4)情報活動 情報の要求・収集・処理・配布の各段階で緊密に調整。

(5)後方支援

(a)補給 米国は米国製の武器等の補給品の取得を支援、日本は国内で補給品の取得を支援。
(b)輸送 両国は米国から日本への補給品の航空・海上輸送に緊密に協力。
(c)整備 米国は米国製の品目の整備を支援、日本は米軍の装備の整備・回収を支援。
(d)施設 米軍は必要な時には新たな施設・区域を提供される。安保条約と取極に従って基地・施設・区域を共同使用。

Ⅲ.日本以外の極東における事態で日本の安全に重要な影響を与える場合の協力

両政府は随時協議。日本が与える便宜供与は安保条約、関連取極、日本の関連法令で規律される。米軍による自衛隊基地の共同使用、便宜供与のあり方を含む研究を行う。

 

現ガイドライン(1997年改定)の概要

Ⅰ.指針の目的

日本への武力攻撃と周辺事態に際して日米協力を行うための堅固な基礎の構築。

Ⅱ.基本的な前提と考え方

1 安保条約と関連取極に基づく権利・義務、日米同盟関係の基本的枠組みは変更されない。

2 日本のすべての行為は、憲法上の制約の範囲内で、専守防衛、非核三原則等の基本方針に従って行われる。

3 指針の下で行われる取組みは、いずれの政府にも立法上、予算上、行政上の措置を義務づけるものではない。しかしながら、各々の判断に従い、このような努力の結果が具体的な政策や措置に反映されることが期待される。

Ⅲ.平素から行う協力

両政府は現在の安保体制を堅持。日本は「防衛大綱」にのっとり自衛のために必要な範囲内で防衛力を保持。米国は核抑止力を保持するとともに、アジア太平洋における前方展開兵力を維持し、その他の来援兵力を保持。両政府は、日本の防衛力と、より安定した国際的安保環境の構築のため密接に協力。協力には物品役務相互提供協定や相互防衛援助協定と関連取決めに基づく相互支援活動を含む。

1 情報交換、政策協議

アジア太平洋の情勢を中心として情報・意見を交換、防衛政策と軍事体制の緊密について協議。

2 安全保障面での種々の協力

この地域における安保対話・防衛交流・国際的軍事管理・軍縮の活動を促進。国連平和維持活動や人道的国際救援活動に参加する場合は相互支援で密接に協力。

3 日米共同の取組み

日本に対する武力攻撃への共同作戦計画、周辺事態への相互協力計画で共同作業。これは双方の関係機関が関与する「包括的メカニズム」において行われる。また、両国の公的機関や民間機関の円滑かつ効果的な対応を可能とする共同演習・訓練を強化。緊急事態で運用される日米の「調整メカニズム」を平素から構築。

Ⅳ.日本に対する武力攻撃に際しての対処行動

武力攻撃が差し迫っている場合には、事態拡大の抑制措置とともに日本防衛に必要な準備を行う。
武力攻撃がなされた場合には、共同対処し、早期に排除する。

1 攻撃が差し迫っている場合

「調整メカニズム」の運用を早期開始。日本は米軍の来援基盤を構築・維持。周辺事態の推移によっては日本への攻撃が差し迫ったものになりうることを念頭に、対応・準備に留意。

2 攻撃がなされた場合

(1)共同対処の基本的考え方

(イ)日本は主体的に行動。米国は適切に協力。
(ロ)自衛隊は主として日本の領域と周辺海空域で防衛作戦、米軍は自衛隊を支援し、その能力を補完する作戦を実施。
(ハ)米国は兵力を適時に来援させ、日本はこれを促進する基盤を構築、維持。

(2)作戦構想

(イ)航空侵攻への対処=日米共同作戦、自衛隊は防空作戦、米軍は支援し、打撃力の使用を伴う作戦も含め自衛隊の能力を補完。
(ロ)日本周辺海域や海上交通路の保護作戦=自衛隊は重要な港湾、海峡の防護、周辺海域での船舶保護などを実施。米軍は同上。
(ハ)着上陸侵攻への対処作戦=自衛隊は着上陸侵攻を阻止・排除する作戦、米軍は自衛隊の能力を補完し、侵攻の規模、態様等の要素に応じ早期に来援し、自衛隊を支援。
(二)その他の脅威への対応=(ⅰ)自衛隊はゲリラ・コマンドウ攻撃等の不正規型の攻撃を早期に阻止・排除する作戦を実施。事態に応じて米軍の支援を得る。(ⅱ)弾道ミサイル攻撃に対し密接に協力・調整。米軍は必要な情報を提供、必要に応じて打撃力部隊の使用を考慮。

(3)作戦に係る諸活動とそれに必要な事項

(イ)指揮と調整=緊密な協力の下、各々の指揮系統に従って行動。役割分担、作戦行動の整合性の確保の手続きをあらかじめ決めておく。
(ロ)日米間の調整メカニズム=作戦、情報活動、後方支援について「日米共同調整所」の活用を含め緊密に調整。
(ハ)通信電子活動=相互に支援。
(二)情報活動=情報の要求、収集、処理、配布の調整を含む協力。情報保全は各々が責任を負う。
(ホ)後方支援活動=政府や地方公共団体の権限と能力、民間の能力を活用しつつ相互支援。その際、(ⅰ)補給=米国は米国製の装備品等の取得を支援、日本は国内の補給品の取得を支援。(ⅱ)輸送=両政府は、米国から日本への補給品との航空・海上輸送などで緊密に協力。(ⅲ)整備=日本は国内で米軍の装備品の整備を支援、米国は日本の整備能力が及ばない米国製品目の整備を支援。また、日本は米軍のサルベージや回収の需要も支援。(ⅳ)施設=日本は安保条約と関連取極に従って新たな施設・区域を提供し、作戦の実施に必要な場合には自衛隊の施設と米軍の施設・区域を共同使用。(ⅴ)衛生=両政府は、傷病者の治療、後送等で相互支援。

Ⅴ.日本の平和と安全に重要な影響を与える周辺事態の場合の協力

周辺事態の概念は、地理的なものではなく、事態の性質に着目したもの。対応する措置は、情勢に応じて異なり得る。

1 周辺事態が予想される場合

両政府は、事態について共通の認識に到達する努力を含め、情報交換、政策協議を強化。事態拡大を抑制する外交努力とともに、「日米共同調整所」の活用を含め調整メカニズムの運用を早期に開始。

2 周辺事態への対応

両政府の措置は、上記Ⅱの基本的な前提と考え方に従い、かつ各々の判断に基づいてとられる。

(1)両政府が各々主体的に行う活動における協力

(イ)救援活動と避難民への対応措置=両政府は【近隣国の】被災地の現地当局の同意と協力を得
つつ救援活動。避難民が日本の領域に流入してくる場合には、日本が対応の在り方を決め、日本が責任を持って対応、米国は支援。
(ロ)捜索・救難=両政府は協力。日本は日本領域および戦闘行為が行われている地域とは一線を画する周辺海域で捜索・救難活動を実施。
(ハ)非戦闘員を退避させる活動=それぞれの国民である非戦闘員を第三国から退避させる場合は、自国民の退避および現地当局との関係について各々責任を有する。各々が適切と判断する場合は、各々の能力を相互補完的に使用し、輸送手段の確保、輸送、施設の使用を含め、計画を調整、実施に協力。
(二)経済制裁の実効性を確保する活動=各々の基準に従って寄与。両政府は適切に協力。情報交換、安保理決議に基づく船舶検査に際しての協力を含む。

(2)米軍の活動に対する日本の支援

(イ)施設の使用=安保条約と関連取極に基づき、日本は新たな施設・区域を適時かつ適切に提供。
米軍による自衛隊施設及び民間空港・港湾の一時使用を確保。
(ロ)後方地域支援=日本は安保条約の目的のために活動する米軍に後方地域支援を行う。後方地域支援は主として日本の領域で行われるが、戦闘行為が行われている地域とは一線を画される周辺の公海とその上空で行われることもある。日本は政府および地方公共団体の権限と能力、民間の能力を適切に活用。自衛隊は、防衛および秩序維持の任務遂行と整合を図りつつ支援。

(3)運用面における日米協力
自衛隊は、生命・財産の保護、航行の安全確保を目的として、情報収集、警戒監視、機雷の除去等の活動を行う。米軍は、周辺事態で影響を受けた平和と安全の回復のための活動を行う。

Ⅵ.指針の下で行われる効果的な防衛協力のための日米共同の取組み

日米安保協議委員会および日米安保高級事務レベル協議を含むあらゆる機会での情報交換、政策協議を充実させ、以下の2つのメカニズムを構築。①計画の検討とともに共通の基準と実施要領等を確立するため自衛隊と米軍、政府その他の関係機関が関与する「包括的なメカニズム」を構築。日米安保協議委員会は、これに方針を提示し、作業の進捗を確認し、必要な指示を出す責任を有する。「防衛協力小委員会」は、日米安保協議委員会を補佐する。②緊急事態で各々の活動を調整する「調整メカニズム」を平素から構築。

1 計画についての検討ならびに共通の基準と実施要領等の確立のための共同作業

包括的メカニズムは、以下の共同作業を計画的かつ効率的に進める。

(1)共同作戦計画と相互協力計画の検討
検討は、その結果が両政府の各々の計画に適切に反映されることが期待されるという前提で行われる。共同作戦計画と相互協力計画の間の整合を図り、周辺事態が日本への武力攻撃に波及する可能性のある場合、または両者が同時に生起する場合に対応し得るようにする。

(2)準備のための共通基準の確立
日本防衛の準備に関し、共通の基準を平素から確立。この基準は、各々の準備段階での情報活動、部隊の活動・移動・後方支援その他の事項を明らかにする。日本への武力攻撃が差し迫っている場合には、両政府の合意で共通の準備段階が選択され、自衛隊、米軍、関係機関による準備のレベルに反映される。

(3)共通の実施要領等の確立
作戦を円滑かつ効果的に実施できるよう、共通の実施要領等をあらかじめ準備する。これには、通信、目標位置の伝達、情報活動、後方支援、相撃防止の要領とともに、各々の部隊の活動を適切に律する基準が含まれる。自衛隊と米軍は、通信電子活動等の相互運用性に必要な事項をあらかじめ定めておく。

2 日米間の調整メカニズム

日米間の調整メカニズムを平素から構築。日本への武力攻撃や周辺事態に際して各々の活動間の調整を行う。調整の要領には、調整会議の開催、連絡員の相互派遣、連絡窓口の指定を含む。この一環として、ハードウェアとソフトウェアを備えた「日米共同調整所」を平素から準備しておく。

Ⅶ.指針の適時かつ適切な見直し

日米安全保障に関連する諸情勢に変化が生じ、必要と判断される場合は、両政府はこの指針を見直す。