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【壊憲・改憲ウォッチ(18)】国会議員の任期延長の改憲論議について(1)

2022年11月15日

飯島滋明(名古屋学院大学、憲法学・平和学)

2022年11月10日、衆議院憲法審査会。改憲政党の一つ、公明党の北側一雄議員は「国会議員の任期延長のための憲法改正論議」に関して、「ほぼ共通の土俵に立って議論が尽くされていると改めて痛感した。かなり具体的な論点が出尽くしている」と発言しました。

自民党の新藤義孝議員も「最優先で取り組むべき課題だ」と発言の上、延長期間を最長で1年とする上限規定を例示しました(『産経新聞』2022年11月10日付〔電子版〕)。

国会機能(立法機能、政監視機能)の維持のため、選挙の際に何らかの事情(たとえば自然災害)で実際に選挙ができない時に備え、国会議員の任期延長のための憲法改正が必要だと改憲4政党は主張します。

しかし、自民党、公明党などの国会議員たちは、「国家機能の維持」が重要と言える政治をしてきたのでしょうか?

2020年、2021年、多くの市民はコロナ感染拡大で大変な状況にあり、憲法53条に基づく国会召集要求がなされましたが、国会は数か月も開かれませんでした。

コロナ感染で多くの市民が大変な状況にある中、国会は数か月も開催されず、市民の生命やくらしを守る法律の制定をしなかったのです。

こうした自民党や公明党が「国会機能の維持」が重要だと主張しても説得力があるのでしょうか?

2017年にも森友学園問題があり、憲法53条に基づく国会の召集が求められましたが、結局、国会は98日間も開かれませんでした。

こうした自民党や公明党が「行政監視」と言っても説得力があるのでしょうか?

森友学園問題やコロナ感染に対する国会のあり方をみても、国会が立法機能や行政監視機能を果たしてきたとは言えません。

自民党や公明党などの国会議員たちは、選挙をしないで国会議員の地位に居座りたいため、「緊急事態」を口実にして任期延長の憲法改正をしようとしているのではないでしょうか?

「そんなつもりはない」と言うでしょうが、「緊急事態」を口実にして、選挙もせずに国会議員の地位にとどまることを認めるのが「国会議員の任期延長」の憲法改正です。

総務省の試算でも、憲法改正国民投票には850億円もの「私たちの税金」が使われます。

緊急事態を名目に選挙をせずに国会議員の地位にとどまることを認める憲法改正に850億円もの税金を使うのを、私たちは認めるのでしょうか?