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【壊憲・改憲ウォッチ(27)】アメリカの軍事戦略の一端を担う「敵基地攻撃能力」の保有と安保法制

2023年3月29日

飯島滋明(名古屋学院大学、憲法学・平和学)

2022年12月16日、岸田自公政権は「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」の「安保3文書」を閣議決定しました。

安保3文書では「敵基地攻撃能力」、岸田自公政権が言う「反撃能力」を持つことが決定されました(「国家安全保障戦略」18ページ、「国家防衛戦略」10ページ)。

さらに「国家安全保障戦略」18ページで明記されているように、岸田自公政権も「存立危機事態」の際にも「敵基地攻撃は可能」と主張します。

安保法制成立により、たとえばアメリカが攻撃されれば、日本が攻撃されなくても「日本の存立が脅かされる」(=存立危機事態)との口実で、自衛隊が先に外国を攻撃することが可能とされました。

安保法制が成立したことで、アメリカの戦争に日本が加担する可能性が生じます。ベトナム戦争などでアメリカは外国に海外派兵を要求し、アメリカ兵の代わりに戦わせました。

たとえばベトナム戦争でのラオスのモン族、アメリカ国防総省は「モンの兵士の10パーセントが死んだ。彼らがいなかったら,27万人のアメリカ兵が死ぬことになっただろう」としています(竹内正右『ラオスは戦場だった』(めこん、2004年)148ページ)。

南西諸島や九州での自衛隊配備・強化は日本防衛でなく、九州を起点として沖縄―台湾―フィリピン―ボルネオ島にいたる「第一列島線」から太平洋に中国艦船等を進出させないというアメリカ戦略をアメリカ軍の代わりに担うものです。

アメリカは日本に中距離ミサイルの配備を計画していました。

しかし岸田自公政権が「安保3文書」で「敵基地攻撃能力」を持つことを決めたため、「中国の中距離ミサイルに対する抑止力が強化されるため〔日本への配備を〕不要と判断した」と報じられています(『読売新聞』2023年1月23日。〔 〕は筆者による補足)。

2017年4月27日、米上院軍事委員会でハリス米太平洋軍司令官(当時)は「日本はTHAAD(高高度防衛ミサイル)かイージス・アショア、あるいは両方の導入を決断すべき」、「日本がこれらを購入すれば、我々が配備しなくても済む」と発言しています。

アメリカの要請を受け、安倍自公政権は秋田と山口に「イージス・アショア」を配備しようとしました。

世界中での自衛隊の武力行使を可能にする「安保法制」も、アメリカが日本に求めていました。

「敵基地攻撃能力の保有」も『読売新聞』の記事で紹介されているように、アメリカの代わりに自衛隊が外国領域への攻撃能力を持つことになります。

その結果、台湾をめぐり米中の武力紛争が生じた際、日本の自衛隊がアメリカの代わりに戦わされる危険性、「ラオスのモン族」の立場におかれる危険性が生じます。

今日は安保法制が施行されてから7年目になります。「敵基地攻撃能力」を持つことで安保法制がさらに危険な法律になっていることを、私たちが社会に発信することが大切です。