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【壊憲・改憲ウォッチ(11)】沖縄復帰50年に寄せて

2022年5月17日

飯島滋明(名古屋学院大学、憲法学・平和学)

5月15日、筆者は那覇市内で行われた「平和とくらしを守る県民大会」(5.15平和行進実行委員会主催)で発言しました。今回はその内容を紹介させて頂きます。

集会で発言する筆者(5月15日)。

1972年5月15日、沖縄は日本に復帰しました。「基本的人権の尊重」「平和主義」「国民主権」を基本原理とする日本国憲法の下、沖縄市民は平和で豊かな生活を送ることができるはずでした。ところが復帰後も憲法の基本原理が侵害、奪われてきました。「基本的人権の尊重」「平和主義」「国民主権」の実現にとり「地方自治」は重要ですが、辺野古新基地建設の強行に代表されるように、「地方自治」も踏みにじられ、「法の支配」も蔑ろにされています。

頻発する米兵犯罪、米軍事故、米軍訓練により、市民の生命や身体、健康が奪われ、脅かされてきました。米軍基地が過度に集中することで、いざという時には攻撃やテロの対象になる危険性があることでも、沖縄の市民の「平和的生存権」が侵害されてきました。米軍基地の存在は、良好な環境を享受し、これを支配する権利である「環境権」(憲法13条、25条)も侵害してきました。沖縄では騒音や環境汚染など、あらゆる種類の基地公害により「環境権」が侵害されてきました。

こうした米軍の状況に関して、米軍が日本に駐留するのは日本を守るためと主張されることがあります。しかし、平時でも沖縄市民の生活や安全を顧みない米軍が有事の際、沖縄の市民を守るでしょうか? アメリカ大統領ジョージ・ワシントンは「他国の善意を信じるほど愚かなことはない」と述べています。1982年4月21日、米上院でワインバーガー国防長官が「日本を守るために米軍が日本に駐留しているわけではない」と発言したように、アメリカ高官はたびたび同様の発言をしています。

米国は米国の軍事戦略のために日本を利用しているのであって、日本を守るために米軍が日本に駐留していると考えるのはナイーブすぎます。南西諸島への自衛隊配備もアメリカの軍事戦略の一端を担い、米軍の代わりに自衛隊が戦うことになります。さらに米軍の代わりに自衛隊を世界中で戦わせるため、アメリカが日本に憲法改正を求めていることも正確に認識する必要があります。

1974年12月14日に国連総会で採択された「侵略の定義に関する決議」でも、「受入国との合意に基づき、その国の領土内に駐留する軍隊の当該外国において定められている条件に反する使用」は「侵略行為」とされます。この定義に照らせば、米軍の行為は「侵略」と見做されます。沖縄の米軍はまさに「主権」を侵害する存在です。「日本を取り戻す」というのであれば憲法改正ではなく、米軍に日本の法令を守らせること、不合理な状況を生み出す「日米地位協定」の改定こそ日本政府は着手すべきです。

2016年4月、米軍関係者により性的に乱暴をされた末に殺された女性の父は「1日も早い基地の撤去」と求めました。米兵等による殺人や性犯罪などの凶悪犯罪で犠牲・被害を受けた人たちは「1日も早い基地の撤去」を繰り返し求めてきました。米兵犯罪の犠牲者の遺族、被害者の心情に寄り添うのであれば、私たちは基地撤去にむけて全力で行動することが求められます。子どもや孫の世代のため、今こそ私たちが対応する必要があると申し上げ、私の発言を終わらせて頂きます。